散骨と樹木葬の違いは、ご遺骨の形状です。散骨ではご遺骨をパウダー状に粉骨してから山へまくのに対して、樹木葬ではご遺骨を壺に入れて樹木近くの土中に埋めます。どちらも自然回帰の葬送として知られていますが、ご遺骨を本当の意味で自然循環の中に還すのか、墓石や墓標の代わりに樹木を用いて自然に近寄った形式にするのかが異なります。

昔から「土に還る」という言葉があるように、土になって地球の一部になっていただく葬送法は、現在の日本においては、「散骨」という方法しかありません。欧米では、火葬せずに遺体を瞬間冷凍後に細かく砕いて埋葬する「堆肥葬」まで登場していますが、自然の一部になる自然葬は世界的にも大きな潮流となっています。日本においても、「後継者がいない」「お墓の建立費用を削減したい」などの理由から、自然葬に関する関心が高まっています。

散骨の場合には、ご遺骨を砕いてパウダー状にしなければならないことに抵抗を感じる方もいらっしゃることと存じます。そういった場合には、ご遺骨の形状に関して決まりのない樹木葬が好ましいかもしれません。ただし、散骨の場合には、法的な制約を受けないために、必ずご遺骨をパウダー状にする必要がありますが、とてもきれいな美しい粉になることをお伝えしておきます。満点の夜空に輝く無数の星になったかのような錯覚さえ覚えることができます。

これらのどちらを選択するかによって、最も大きな違いは、「その後お参りができるかどうか」にあるようです。散骨の場合、その多くは海にまく海洋散骨が主流になっていますから、お参りするところがないと後で後悔するケースがあるようです。ですが、山林散骨の場合、墓石のようなモニュメントこそありませんが、「このあたり一帯に眠っているんだな」と認識することができますから、どこに向かって手を合わせればいいのかわからなくなることもありません。もちろん、樹木葬の場合には、ピンポイントで場所がわかりますから、何の問題もありません。

問題は、数年後の合祀・合葬にあります。合祀・合葬とは、「合わせて祀る（まつる）」という意味です。 骨壺から焼骨を取り出し、他の人のご遺骨と一緒にする埋葬方法のことを指します。ご遺骨は色々な人の遺骨とひとまとめにされ混ざった状態になり、長い年月をかけて土に還るかたちで地面に埋葬されます。

実際のところ樹木葬では、数年間は樹木の根元付近に埋葬したとしても、数年後に壺ごと取り出して、永代供養と称して合祀してしまうというスタイルがほぼ大半です。その際に永代供養料として新たな費用が掛かる場合もあり、墓石を建立せずに費用を削減したつもりが、結果的に思ったよりも費用がかかったという声も聞こえてきます。合祀・合葬は、やむを得ない事情や継承者問題の対処法として選ばれる場合がほとんどですが、たった数年の間だけ樹木の根元に眠るだけなら、最初から合祀・合葬でよかったのでは？という声も聞きます。多くの場合、合祀墓・合葬墓に移行した後も、共用の参拝スペースなどがありますから、お参りをすること自体は可能です。樹木葬を選択される場合には、合同供養の有無や回数、年数については、契約前に確認しておいたほうがよさそうです。