海には所有者がいません。「海が誰の所有物でもない」ことは、最高裁の判決でもはっきりと明らかにされています。田原湾干潟訴訟判決と呼ばれる判決の内容は「海は、古来より自然の状態のままで一般公衆の共同使用に供されてきたところのいわゆる公共用物であって、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないもの」と判示しました。つまり、海は、誰の所有物にもならないので、売ったり、買ったり、貸したりということもできないということになります。
ただし、これは、所有権の問題に限ってのことです。海には所有すること以外にも多くの権利が設定されています。最高裁の判決では、「海は公共用物であって排他的支配権である土地所有権の設定は許されない」としているものの、支配権ではない性質を持つ権利の設定についてはこれを否定していません。漁業権は、漁業法に基づき、公共用水面に設定されていますし、海の家の営業権も漁業協同組合に納めるのが通例となっています。漁業権は法律によって保護されている権利ですから、私たちが散骨する場合には、漁業権によって設定されている養殖場は避けなければなりません。「海はみんなのものだから・・・・」と一般の私たちが勝手に散骨を行うことはできません。これは、養殖場で勝手にダイビングや磯遊びを行うことができないのと同じ理由によるものです。養殖場の近くで散骨したことで、海産物の品質に影響を与えてしまうことは、漁業権の侵害になってしまいます。
海水浴場の管理は、市区町村などの自治体が行っていることがほとんどです。さらには、季節によっては、自治体から委託を受けた民間業者がライフセービングなどの業務を行っています。海水浴場や海水浴場のの近くで散骨したことで、公共の場所を侵害したということにもなりかねません。散骨の許可は、自治体は決して出してくれません。
ちなみに、海洋の利用方法については、国連海洋法条約に基づき、公海については、世界中の人たちが自由にこれを利用する権利を有していることになります。各国の距岸200カイリの「排他的経済水域」や距岸12カイリまでの「領海」を除き、公海は、世界中の人々みんなのものなのです。
※引用:引用:海洋政策研究所
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