自分とは、自我意識であり、自我意識は意識に支配されている自我。欲求にまみれた自我を指します。玉のような純粋無垢な魂は、そんな自我意識の中心にあるものです。自我意識と魂は同じではありません。
自我意識は肉体が作り上げていくものです。食欲、性欲、睡眠欲などの欲求は、肉体があるから望んだものです。生命活動を行っていくうえで望んだ気持ちなのであって、これらは、魂が欲しているというわけではありません。死とは、肉体を失うのと同時にこれらの欲求からも解放されることです。これらのタガがはずれることを本来の死と表現します。
私たちが、現世で肉体に支配されながら生きていることは紛れもない事実です。どんなに有名な高僧も、どんなに瞑想を行って自分を見つめてきた熟練者も、悟りを開いたと自覚した賢者でさえもこの欲求自体を失くすことはできないと言われています。肉体がある限り、この肉体を伴いながら生きることしかできません。生きているうちは、魂だけの存在にはなれないわけです。私たちがただひたすらに自分の欲求だけを求めて暮らすなら、世の中は犯罪だらけになってしまい、社会は確実に崩壊を招きます。ですが、欲求が決して悪いということではありません。欲求がなければ、世の中にある便利なモノは生まれてきていませんから、あくまでもバランス感覚が大事だということになります。私たちは、その欲求をどう自制していくかを意識しながら暮らしていくというのが倫理観です。倫理観を無視した自我意識は、周囲に不快感をもたらします。悪気があろうがなかろうが社会を壊して周りの人たちを不幸にします。ですから、私たちは自分をコントロールしながら他者にも配慮をしながら生きています。
多くの人たちが幽霊の姿を見たり、声を聴いたりしています。霊障で困っている人たちもいます。霊能者たちは、浮遊霊や怨霊が存在すると言います。霊はすでに肉体を持っていないので、一切欲求を満たすこともできません。絶対的に満たされることもありません。残念ながら、エンドレスなループにはまってしまっている状態です。霊の正体は自我意識です。生きている私たちが自我意識と魂の境目がわからないように、彼らもまた境目がわからず苦しんでいる状態です。
問題なのは、亡くなった後にまで、自我意識が感じた思いを今世に残してしまうことで、そうした念が浮遊霊や怨霊のような存在になってしまうことです。繰り返しますが、私たちが認識している自分という存在は、自我意識であって、それ自体が魂なのではありません。魂は内包していますが、それを包み込んでいる自我意識でいっぱいいっぱいになってしまっている状態です。成仏とは、亡くなった後に、自我意識を脱ぎ捨てた魂になるということです。自我意識は脱ぎ捨てられているわけですから、成仏すれば、自我意識はなくなり純粋無垢な魂だけの存在になります。成仏するとはリセットされるということです。生まれ変わっても、普通、過去の記憶はありません。
思いは念です。念の波動は、この世に残ります。生きている私たちには時間があって、環境が変化していきますが、思いのエネルギーは、ただそのままあり続けることになります。肉体がないため、時間と共に環境が変化することは感じることができません。ですから、ただ、その思いはそこに残り続けます。念が強ければ強いほど、そのエネルギーはそこに残ります。思いや念は波動です。私たちが感じられないくらいの微細なゆらぎは波動です。波動は固有の振動数(周波数)を持っています。物理学的にも波動は周りに影響を与え広がっていきます。そして、同じ周波数同士の波動は共鳴しあいます。生きている人であっても、暗い気持ちの波動は、そうした霊の波動と共鳴しあいます。引き寄せあい、増幅します。それが霊障と言われるものです。多くの場合、決して彼ら自身に悪気があるわけではありません。暗い苦しい気持ちを持った者同士は勝手に引き合い、大きな力になっていきます。時に信念や執念も怨念に変わることがあります。特定のことに対する極端に強いこだわりも、誰かを思う強い気持ちは時に怨念に変わることがあります。戦時中の兵隊さんや戦国時代の武将が幽霊として出てくるのは、念には時間という概念がなく、環境の変化を感じ取る肉体もないので、ただ、孤独に一人そこにあり続けることになってしまいます。
どろどろの感情がうごめく現世に怨念は残りやすいと言われます。霊能者たちは、魂ではなく、現世に残る自我意識に対してアプローチを行うものです。もう死んだのだから、あきらめろと伝えます。周りに迷惑をかけながらそこに存在するよりも、一度リセットして、もう一度生まれ変わったほうがハッピーですよと伝えます。でも、私たちは霊能者ではありませんからそんなことはできません。でも、私たちにもできることがあります。その方法は、自然の中に解き放ってあげることです。散骨が最も自然の中に解き放ってあげることになります。欲求を満たしたい霊は、現世の物質にこだわります。ですから、遺骨もそんな波動を持ったままです。自然の中に解き放ってあげることで、太陽光や月明りやそよぐ風が癒してくれます。骨壺に入れて真っ暗闇の墓に閉じ込めておくのでは、その波動は変化せずに残り続けます。遺骨を細かくして、自然の中に解き放ってあげる散骨は、そういった怨霊を増やさないために最も有効な方法であるともいえます。 |